第126章 私は目がない人ではない

「もし私がただの橘結衣だったら、あなたと条件を交渉する資格なんてないのかもしれない。でも――私が橘家のお嬢様だけじゃないとしたら?」

田村良樹が反射的に眉をひそめる。

「……何だと?」

次の瞬間、黒い四角い札が少女の手から飛び、彼の目の前のテーブルへと――カタン、と落ちた。

札の中央には、三日月の紋。

霧をまとったような赤い三日月は、どこか妖しく、不吉なほどに目を引く。

そして、そこに刻まれていた二文字。

「派遣」

田村良樹の眉間が、ぐっと深く刻まれた。

ブラッドムーンの派遣命令――?

だが、そんなものは誰でも持てる代物じゃない。持てるのは、よほどの――。

ブラッドムー...

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